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HEAT TREATMENT REPORT / No.02 / COMPARISON

【比較表】熱処理受託の
主要プレイヤー

受託熱処理に携わる6社を、事実項目だけで横並びにします。

金属部品がクレーンで運ばれ、熱処理炉の列が並ぶ工場の風景

受託熱処理の比較表を読む前に

最終更新日:

本ページの比較表は、各社の公式サイトに掲載されている会社概要・事業内容・拠点情報など、確認できた事実項目だけを並べています。順位付けや優劣の判断は行いません。公式サイトで確認できなかった項目は「公式サイト参照」と表記しています。

受託熱処理事業者は、加工メーカーや素材メーカーから依頼された部品・素材に、焼入れや焼戻し、浸炭、窒化、高周波焼入れ、真空熱処理といった処理を施す事業者です。熱処理は部品の品質と寿命を決める要の工程でありながら、多くの中規模事業者に分かれる分散型の産業であり、事業内容も「幅広い工程を一社で担う会社」に「特定の工程に特化した会社」が混在しています。そのため、事業者を比較するときは「どの工程が得意か」「どの産業の部品を扱いやすい装置規模か」という観点で見ると構造が見えやすくなります。

以下の表では、日本熱処理、中信高周波、高周波熱錬、旭千代田工業、日本パーカライジング、愛知製鋼の6社を取り上げています。熱処理業界は中小を含め多数の事業者があり、ここに掲載されていない事業者が存在しないという意味ではありません。掲載は、公式サイトで事業内容と主要な事実を確認できた事業者に限り、いずれも一社の自己説明をもとにしています。表のあとには、各社のプロフィールを公式サイトの記載に基づいて整理しました。

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【比較表】熱処理受託事業者の事実項目一覧

プレイヤー本社上場区分主な工程・提供物対象産業の傾向拠点・グループ公表実績・認証(公式サイト記載)
日本熱処理株式会社川崎市川崎区非上場焼なまし・焼ならし・焼入焼戻・応力除去焼なまし・固溶化熱処理鋼・鋳鋼・鋳鉄・ステンレス・非鉄金属(鋳物・鉄骨・機械部品)本社・川崎工場(相模原工場は2014年に統合)創業1939年、ISO9001、従業員13名
株式会社中信高周波長野県松本市非上場高周波焼入・真空焼入・ガス浸炭焼入・窒化系・ソルト焼入・真空炉中ろう付け自動車部品(NTN・IHI・小松製作所等が主な取引先と公表)・産業機械・精密機器本社・松本の1拠点(敷地23,000平方メートルと公表)88名、ISO9001・ISO14001、熱処理技能士43名合格(令和6年6月現在)
高周波熱錬株式会社東京都品川区東証プライム(証券コード5976)高周波(IH)焼入れの受託加工・誘導加熱装置の製造・PC鋼棒等の製品自動車・建設機械・橋梁・ばね東京本社、海外子会社あり(公式サイト参照)1946年設立、連結売上高582億77百万円(2026年3月期)、連結従業員1,651名
旭千代田工業株式会社愛知県尾張旭市非上場ガス浸炭焼入・ガス軟窒化(イソナイト)・真空浸炭・PVD・ACコート・焼入焼戻自動車( 主な取引先に自動車メーカー・部品メーカーと公表)・油圧・建機本社のほか豊田・鈴鹿・豊橋・岐阜・土岐・ACCの工場、日本パーカライジンググループ設立1944年、年商158億円(2026年3月)、従業員279名、ISO9001
日本パーカライジング株式会社東京都中央区東証プライム(証券コード4095)表面処理薬品の開発製造・熱処理ほかの加工事業・装置事業自動車・機械・建設(表面処理・防錆と熱処理を一体で提供)国内に加工拠点、海外にグループ会社、旭千代田工業等の関連会社を公表設立1928年、資本金45億6,039万円
愛知製鋼株式会社愛知県東海市東証プライム(証券コード5482)特殊鋼・鍛造品と一体の焼入焼戻(調質)を含む素材側の製造自動車(トヨタグループの素材メーカーと公表)・産業機械東海・刈谷・知多などの拠点(公式サイトの事業拠点参照)設立1940年、主要設備・主要製品を公式サイトで公開

2026年10月29日時点、各社公式サイト・公開資料に基づく。最新情報は各社サイトで確認してください。「公式サイト参照」は、公式サイト上で確認できなかった、または年度により変動しうるため記載を控えた項目です。表の事業内容は各社の自己説明であり、第三者による評価ではありません。取引先名は各社公式サイトの記載に基づく例示であり、取引関係の現時点での状況を保証するものではありません。

各プレイヤーのプロフィール

以下は、公式サイトに掲載されている内容に基づく各社の概要です。事業内容は各社の自己説明であり、当サイトによる評価ではありません。

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日本熱処理株式会社

日本熱処理株式会社は、1939年(昭和14年)の創業から80年以上にわたって熱処理を続けてきた、川崎市の熱処理専業事業者です。公式サイトの会社概要では、本社・工場が川崎市川崎区浅野町にあることが示されています。かつて相模原に工場を持っていた時期がありましたが、2014年には相模原工場を閉鎖して本社工場に統合しており、一つの工場に集約した体制となっています。

事業内容は「熱処理」とされていますが、営業品目として、鋼・鋳鋼・鋳鉄・ステンレス・非鉄金属の熱処理、応力除去焼なまし、固溶化熱処理、焼なまし、焼ならし、焼入焼戻等を挙げています。主な取引先は、IHIや日本冶金工業、JFEエンジニアリング、三菱化工機など、大形の機械や金属製品を手がける会社が多く、大型の炉設備による大物加工が中心であることがうかがえます。2018年にISO9001の更新を取得したほか、2024年には本社工場で電気炉の完成を公表しており、設備の更新が続けられています。日本熱処理技術協会と東部金属熱処理工業組合に所属していることも会社概要に記載されています。

株式会社中信高周波

中信高周波は、1971年5月に中信高周波化学工業共同組合として創立し、1990年に株式会社中信高周波となった長野県松本市笹賀の熱処理事業者です。公式サイトの会社概要では、本社・松本の大久保工業団地の一つの拠点で、敷地23,000平方メートル・工場建物10,000平方メートルとされる設備規模と、88名の従業員数が示されています。社長のあいさつでは「熱処理によって部品に魂を吹き込む縁の下の技術集団」との自社像が示されています。

業務内容は熱処理関係を中心に幅広く、公式サイトには高周波焼入、真空焼入(ガス冷・油冷)、ソルト焼入、ガス浸炭焼入、ガス浸炭窒化焼入、ガス軟窒化、ガス浸硫窒化、イオン窒化、サブゼロ処理、焼なまし、磁性焼鈍、固溶化処理・時効処理といった工程、および黒染やショットブラスト等の表面処理、真空炉中ろう付けが列挙されています。浸炭焼入とショットピーニングの複合など、複数の処理を組み合わせる工程も取扱いとして示されています。ISO9001・ISO14001を取得し、主な取引先としてNTN、IHI、小松製作所、デンソー等が記載されています。技能検定では、熱処理技能士の特級1名・1級12名・2級30名の合格者を有すと2024年6月時点で公表しており、技術継承の基盤としての技能士の豊かさが特徴的です。

高周波熱錬株式会社

高周波熱錬(Neturen)は、東京都品川区に本社を置き、誘導加熱(IH)を事業の核とする企業です。公式サイトの会社概要では、現社名となった1946年5月15日を設立とし、資本金64億18百万円(2026年3月31日現在)、東証プライム市場に上場(証券コード5976)し、連結売上高582億77百万円・連結従業員1,651名(2026年3月期)と公表されています。

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事業は「製品部門」「IH部門」「技術部門」「賃貸部門」に分かれており、製品部門では高周波熱処理をしたPC鋼棒やばね鋼線、プレハードン線の製造販売と自動車部品・建設機械関連製品の製造販売、IH部門では機械部品等の高周波焼入れの受託加工・製造販売と、各種周波数の電源を使う誘導加熱装置・高周波焼入設備の製造販売を扱っています。つまり同社は「受託熱処理」と「誘導加熱装置の製造」を両方活動としており、page-03 の炉メーカーの比較表にも設備側の事業者として登場します。PC鋼棒は橋梁や建築の部材として大量に使われるため、大がかりな連続設備による生産と、自動車部品向けの受託加工が一社の中で共存している形です。

旭千代田工業株式会社

旭千代田工業は、愛知県尾張旭市に本社を置く総合表面改質処理の会社です。公式サイトの会社概要では、1944年(昭和19年)11月10日に日本金属浸透株式会社として設立された沿革が示されており、社名は千代田製陶株式会社、千代田産業株式会社を経て、1967年(昭和46年)に現在の旭千代田工業株式会社となっています。資本金9,500万円、従業員数279名、年商158億円(2026年3月)とされ、ISO9001の取得が記載されています。

処理の中心は、1963年(昭和38年)に導入した「タフトライド」処理(後にイソナイトへ名称変更)をはじめとする塩浴系の軟窒化のほか、ガス浸炭焼入、ガス軟窒化、真空浸炭、PVD・DLC・ACコートなどのコーティング、微粒子ショットまで幅が広く、各種焼入焼戻や歪取り矯正なども取扱いとして挙げられています。主な取引先には自動車やトランスミッション部品、油圧、建機の各分野の会社が五十音順で記載されており、関連会社に日本パーカライジング、浜松熱処理工業、パーカー熱処理工業、三洋電子等が確認できます。三洋電子は高周波焼入れのメーカーとしてグループ化されたことも沿革に示されています。部品の製造ではなく「処理の提供」を中心とする姿が、部品メーカーの多様な要求に応える形になっています。

日本パーカライジング株式会社

日本パーカライジングは、東京都中央区日本橋に本社を置く、表面処理薬品・加工・装置の三つの事業を持つ企業です。公式サイトの会社概要では、設立が1928年7月12日、資本金が45億6,039万円と記載されています。東京証券取引所プライム市場に上場しています。

技術としての「パーカライジング」(リン酸塩皮膜処理)の開発から始まった経緯を持ち、現在では、薬品事業(化成処理薬剤や防錆油等の開発製造販売)、加工事業(防錆・熱処理・めっき・塗装などの受託加工)、装置事業(前処理・電着塗装装置や排水処理設備等の設計製造)を組み合わせた体制となっています。熱処理に特化した形ではなく、表面処理・防錆加工と熱処理が同じグループで供給される点が、既にみた「熱処理専業」とは異なる形です。旭千代田工業や浜松熱処理工業、パーカー熱処理工業といった関連会社をもつことでも知られ、国内外の自動車・機械産業のサプライチェーンの中で、表面改質という領域全体を得意とする位置づけです。

愛知製鋼株式会社

愛知製鋼は、愛知県東海市に本社を置く特殊鋼メーカーで、トヨタグループの素材メーカーとされています。公式サイトの企業情報では、1940年の設立以降、特殊鋼を中核に鍛造品やステンレス鋼・チタン材を expanded、刈谷地区や知多地区など愛知県内に複数の生産拠点を持っていることが示されています。東証プライム市場と名証プレミアに上場しています(証券コード5482)。

愛知製鋼を本表に含めた理由は、先に述べた「素材側の調質」と「素材と一体の熱処理」の実態を示すためです。部品メーカーが図面を設計するよりも前の段階、素材として鋼材や鍛造品を納めるときに、焼なましや焼入焼戻等の処理が組み込まれることがあり、そこでの熱処理は部品メーカーの内製とも受託とも異なる位置づけです。加えて、刈谷工場の鋼材熱処理炉に対して水素燃焼対応の改修と実証試験を進めたことがメディアで報じられており、素材側の熱処理が省エネ・脱炭素の課題と直結する例としても注目されます。素材側と部品側で熱処理の位置づけがどう異なるかを併せて読むと、受託熱処理事業者の事業づくりが理解しやすくなるため、本表に素材側の事業者を一社入れています。

受託事業者を比べるときの視点

受託熱処理事業者を選ぶ際の判断材料として、加工業者やメーカーが確認しやすい視点を整理します。いずれも優劣を示すものではなく、自社の部品と条件に照らして確認するための項目です。

  • 保有する炉の種類:焼入れ・浸炭・窒化・高周波・真空・ソルトなど、どの工程をどの型式の炉で行うか。小型の部品か、大物の鋼材かで適した炉が変わります。
  • 品質記録と検定:熱処理技能士の保有数、ISO9001やISO14001のような認証の有無、検査報告の提供方法。
  • 歪みのコントロール:精密部品では処理後の寸法変化が重要です。処理方法と歪み対策の考え方を聞いておくことがあります。
  • エネルギーと環境:燃料の種類への対応(天然ガス・水素の動き)、排水や排気の処理方法、省エネの取り組み。
  • 体力と地縁:地理的によったり、部品の運搬と回転、設備更新の計画、技能士の暮らしとしての連続性。

加工業者が熱処理を選ぶ際は、量と品種、要求する品質記録の受け取れる方法、コスト、トータルとしての納期の安定がポイントになります。さらに、処理と表面処理が一体であることが利点になる場合、逆に専業特化が強みになる場合もあるので、部品の要求に照らして整理することが大切です。加工と熱処理の流れの観点からは、熱処理産業の全体像の「品質と責任の境目」、処理の原理と要求からは焼入れ・浸炭・窒化・高周波の原理と用途が参考になります。設備そのものの検討が必要なときは、【比較表】工業炉・熱処理設備メーカーもあわせてご覧ください。

一次情報の確認先

本サイトは工業炉・金属熱処理産業を公開情報から整理した業界レポートであり、個別の工程設計・材料・設備の選定に関する助言ではありません。熱処理条件・規格・安全基準はJIS・関係法令・専門事業者の最新情報をご確認ください。